〇文庫「カラ売り屋」
(2009年3月刊行 2013年6月文庫化、黒木 亮著)
―あらすじ―
パンゲア&カンパニーは、昭和土木工業にカラ売りを仕掛けたものの反撃に遭い、資本の大半を失う窮地に立たされた。
彼らは、敵の財務体質を暴く分析レポートを作成できるのか?
カラ売り屋と企業の攻防を描く表題作「カラ売り屋」ほか、地方再生に蠢く「村おこし屋」、新興国へのハイリスク融資に取り組む「エマージング屋」、経営破綻した温泉旅館の「再生屋」、一攫千金を夢見る男たちの執念と苦闘を活描する熱き物語。
―雑 感―
約480ページ。
表題となる「カラ売り屋」の話と思ったら、計4編からなる短編集だった。
各編とも100~130ページ程だが、登場人物がそこそこ多く、情報量も多い。
他著もそうであるが、各編とも登場人物の人となりも描かれていて感情移入しやすい。
フィクションとはいえ経験に裏打ちされているので、1・3編のように触れたことのない国際金融の世界で日本人が働くというシチュエーションに憧れる。
また、海外で奮闘しているとは言え、日本(人)的な考え方や所作を日本人登場人物に織り込んでくれているのは読んでいてうれしい。
2・4編は、時々報道等を賑わすので、やっぱりそういう感じなのかぁと読み進めた。
「村おこし屋」の話は、普通に暮らしている方々には興味ないよな。
中央からの降ってくるバラマキのお金で、ズル賢い「村おこし屋」にホダされて大きな箱物を造り、維持費の負担だけが残る。
結局、公共の福祉の名のもと、田舎の地方公共団体が貧乏くじを引いて、地域の一部の者が潤うイメージ。
「再生屋」も、まじめに働く従業員が貧乏くじを引かされ、新経営者のもとで頑張らされると書くと身も蓋もないが、それぞれ思惑のある再生屋を含む関係者が、入れ替わり立ち替わり登場するので面白い。
ではでは。