文庫「スケープゴード」他2冊

文庫

〇文庫「スケープゴードー金融担当大臣・三崎皓子ー」

(2014年10月刊行、2017年10月文庫化 約390ページ 幸田 真音著)

ーあらすじー

三崎皓子、51歳。気鋭の経済学者で、テレビのコメンテーターとしても活躍中だ。

ある日、民正党の総裁・山城泰三に呼び出され民間人として金融担当大臣に指名される。

就任直後、地方銀行の取り付け騒ぎを鮮やかに解決した皓子は、故郷・京都で参議院選挙へ出馬、官房長官に抜擢される。

そんななか、山城が病に倒れて。

皓子を待ち受ける運命は?

ー読後感ー

読み易く、展開が早い。

主人公は、シングルマザーで外資系証券勤務⇒大学教授へ転身しTV等出演の設定。

後に総理となる国会議員に請われて、民間出身の金融担当大臣となる。

金融担当大臣着任早々に地方銀行の取り付け騒ぎ。

その原因となった融資先企業救済のため、昔のコネクションで外資との橋渡し。

その手腕、党勢拡大の目玉として戻らないと決めた地元での選挙に出馬せざる得ない状況へ。

当選⇒内閣官房長官へ。

総理大臣が職務を行えない状況となり、回りからの押し上げで総裁選出馬、2位敗退するも衆参両院の国会の首班指名選挙の際に野党の一斉投票により、女性初の内閣総理大臣に選出。

と盛りだくさん、さらっと流されている。

〇文庫「大暴落(ガラ)ー内閣総理大臣・三崎皓子」

(2017年3月刊行、2020年3月文庫化 約500ページ 幸田 真音著)

ー日本初の女性総理大臣となった三崎皓子だが、党重鎮議員の横やりで組閣が滞る。

そんななか、「今後の降雨量次第では、荒川が決壊し東京が水没する可能性がある」との情報が入り、さらに追い打ちをかけるように、台風も相次いで発生、、、。

一方、時を同じくして1日で50円を超える円安が進み金利は急騰、、、大暴落(ガラ)となる。

日本と首都東京を襲う未曾有の危機!!

皓子の下した決断は?

ー読後感ー

前作の首相指名後からの続編。盛りだくさんであるが、こちらも読み易い。

各閣僚指名が難航する中で、荒川上流での短時間豪雨が予想される旨の報告を受ける。

その想定以上の短時間豪雨により、東京都内である荒川下流にて破堤発生。

一方、同時期に元日銀委員による日本国が債務超過である等のネガティブ発言により、ヘッジファンドによる日本国債売りが発生、自然災害による東京の混乱・機能停止とともに日本国債が暴落する。

縁の下の力持ちである、河川事務所がキャッチアップされていることは好印象。

自然災害による東京の都市機能の麻痺・国債暴落、ともに防ぐことはできないが、その対応策・事後対応策が外資時代の個人的な知り合い・友人によるもので、スケールの大きい話の割には、、、の印象。

〇「裏カジノディーラー」

(2019年12月刊行 約270ページ 田村 佳彰著)

ーあらすじー

華やかなカジノの世界には非日常を求める博打好きが集まる。

だが、その世界で生き残れる人間はそう多くはない。

皆、自分の内側に渦巻く欲望の業火に焼かれて、その身を焼き尽くしてしまう。
本書では、自分がカジノの世界で経験した出来事を赤裸々に記した。

固有名詞や店舗の場所、エピソードの細部などについては多方面に迷惑がかかることを考慮し、一部を変更したが、カジノの実情を生々しく活写したものになっていると思う。

カジノディーラーとしてこの道に入るところから始まり、青春と共にカジノで過ごした最も濃密な約五年間を業界のタブーを恐れずに書いた。
究極のリアリティで描かれる裏カジノの世界をご堪能あれ。

ー読後感ー

元裏カジノディーラーによる経験談。

日々の淡々とした業務、来店する客筋、運営者、運営(ハウス)側が、ディーラーに仕事(イカサマ)させて、客のお金を溶かすことや、客側が関係者と組んでハウス側の売り上げを溶かすことなどが描かれている。

遠巻きにそれら関係者はいるようであるが、暴力団や反社ではないオーナー、開業コンサルがいることにちょっと驚いた。

隠語はなんとなく推察できるが、各隠語の具体な説明はなし。

海外カジノに行ったことのある身としては、未知の世界の話であるが、まぁ想像できる感じ。

ではでは。